名古屋高等裁判所 昭和52年(行コ)6号 判決 1978年6月28日
名古屋市東区長塀町三丁目一〇番地
控訴人
服部房江
同所
同
服部恵一
同所
同
服部信司
名古屋市瑞穂区萩山町三丁目三六番地の一
同
岡本明代
右四名訴訟代理人弁護士
田中一男
名古屋市東区主税町三丁目一一番地
名古屋東税務署長
被控訴人
堀淳二
右指定代理人
細井淳久
同
加藤勝
右指定代理人
内藤久寛
同
柳原国良
同
小山均
主文
本件控訴をいずれも棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実
控訴人ら代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人が控訴人らに対し昭和四八年三月二日付でなした、控訴人らの被相続人服部秋季の昭和四四年度分所得税の総所得金額を金八八三万三、四五〇円とした更正処分のうち金二六五万四、〇〇〇円を超える部分、同じく昭和四五年度分所得税の総所得金額を金八四六万八、六五〇円とした決定処分のうち金二五九万五、二〇〇円を超える部分、同じく昭和四六年度分所得税の総所得金額を金三八九万九、九〇二円とした更正処分のうち金四〇万一、七四二円を超える部分をいずれも取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。
当事者双方の主張及び証拠関係は、左記のとおり付加するほかは原判決事実摘示と同じであるから、これを引用する。
(控訴人らの主張)
控訴人らは、石井光長を被告として、亡服部秋季(控訴人らの被相続人)の石井に対する貸金一、七五〇万円の支払請求訴訟(名古屋地方裁判所昭和四九年(ワ)第二、六八六号)を提起したが、右訴訟において、昭和五〇年一一月一四日、別紙和解条項のとおりの訴訟上の和解が成立し、これによつて、控訴人らが秋季から相続により承継取得した同人の石井に対する貸金債権は金四〇〇万円と確定して既判力を生じ、他になんらの債権債務もないことになつた。したがつて、被控訴人主張の利息収入についても、これがなかつたことを前提として本件各処分の当否を判断しなければならないものである。
よつて、右収入の存在を前提とする本件各処分は、控訴人ら主張の限度において違法であり取り消しを免れない。
(右主張に対する被控訴人の答弁)
控訴人らが、その主張のとおりの訴訟を提起し、和解が成立したことは認めるが、その余の点は争う。
控訴人ら主張の和解により、被控訴人主張の利息収入がなかつたことになるものではなく、控訴人らは、ただ金四〇〇万円の貸金債権を保有し、その余の債権を放棄したにすぎない。右利息収入は、右和解の成立に関係なく、本件各処分においては雑所得として計算されるべき性質のものである。
(証拠関係)
一 控訴人ら
甲第三号証、第四号証、第五号証の一、二、第六号証の一ないし四、第七号証の一、二、第八号証の一、二、第九号証、第一〇号証の一、二、第一一号証ないし第一四号証を提出。乙第九号証中申述者の署名印欄の石井和代の署名捺印の成立は不知、同号証のその余の部分及び乙第七号証、第八号証の成立はすべて認める。
二 被控訴人
乙第七号証ないし第九号証を提出。甲第九号証、第一〇号証の一、二、第一一号証、第一二号証、第一四号証の成立はいずれも不知、その余の甲号各証の成立はすべて認める。
理由
当裁判所も原審と同じく控訴人らの本訴請求は失当として棄却を免れないものと判断する。その理由は、次のとおり補足するほか原判決理由説示と同一である(当審において提出された証拠中には右判断を左右するに足りるものはない。)から、これを引用する。
控訴人らの和解に関する主張についての説示を左のとおり補足する。
控訴人らが、その主張のとおり、訴訟を提起し、訴訟上の和解が成立したことは当事者間に争いがない。ところで、その和解条項によると、和解により、その成立時現在において、控訴人らが石井光長に対し、亡服部秋季貸付にかかる貸金債権四〇〇万円を有し、これについて分割弁済が約されたこと及び控訴人らと石井間には他に何らの債権債務のないことが確定されたにすぎない。もとより右和解条項には過去において被控訴人主張の利息収入がなかつたことについては言及されていない。また、被控訴人ないし国が民事訴訟法上右和解の既判力の及ぶ範囲の者でないことはもちろんである。してみれば、右和解は雑所得としての利息収入の存否の認定に関しては何らの消長をも及ぼすものでないと解すべきである。しよせん、控訴人らの主張は採用するに由がない。
しからば、原判決は相当であつて、本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、民事訴訟法三八四条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 三和田大士 裁判官 鹿山春男 裁判官 伊藤邦晴)
和解条項
一 被告は原告らに対し、原告ら先代亡服部秋季に対する貸金債務金四〇〇万円の支払義務あることを認め、これを次のとおり分割して原告ら代理人田中一男方に持参又は送金して支払う。
1 昭和五〇年一二月二五日限り金三五〇万円
2 昭和五一年一月から同年一〇月まで毎月末日限り金五万円宛
二 被告が前項の分割金の支払を一回以上怠つたときは、期限の利益を失いそのときにおける残額を一時に支払う。
三 原告らはその余の請求を放棄する。
四 原、被告らは以上に定めた以外、他に何らの債権債務の存在しないことを互に確認する。
五 訴訟費用は各自の負担とする。